うつ病(鬱)の傷病手当金|受給条件・金額の計算・申請の流れを解説
傷病手当金とは?うつ病・鬱病も対象になる
傷病手当金は、健康保険法に基づく制度で、業務外の病気やケガで働けなくなった際に、収入の一部を補填する公的な給付金です。会社員など健康保険(社会保険)に加入している人が対象で、国民健康保険には傷病手当金の制度はありません。
うつ病や抑うつ状態、適応障害といった精神疾患も、当然この制度の対象です。「心の病気だから給付されないのでは」と思い込んでいる方もいますが、それは誤解です。精神疾患は骨折や手術と同様に、「療養が必要な状態で働けない」という条件を満たせば傷病手当金を受給できます。
✓ 傷病手当金の受給者の約35%が精神疾患という現実
全国健康保険協会(協会けんぽ)の令和5年度現金給付受給者状況調査によると、傷病手当金の支給件数のうち精神疾患が占める割合は35.2%で第1位となっており、がん(13.6%)の約2.5倍に達しています。平均支給期間も精神疾患が約219日と最も長く、療養に時間がかかる傷病であることが数字にも表れています。
また、同調査では20歳以上35歳未満の層では傷病手当金受給者の半数超が精神疾患を原因としており、若い世代のメンタルヘルス不調が深刻化していることもわかります。
うつ病で傷病手当金を受給するための4つの条件
傷病手当金を受け取るには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。一つでも欠けると支給されないため、それぞれの意味をきちんと理解しておきましょう。
1 業務外の病気・ケガであること
傷病手当金が適用されるのは、あくまでもプライベートな事情(業務外)が原因の場合です。過重労働やハラスメントなど業務が直接の原因でうつ病を発症した場合は、労働災害(労災)の対象となり、健康保険の傷病手当金ではなく労災保険の休業補償給付が適用されます。
ただし現実には、うつ病の原因を業務か私生活かで明確に線引きするのが難しいケースも多くあります。主治医や職場の産業医とも相談しながら、適切な対応を選ぶことが重要です。
2 療養のために働くことができない状態(労務不能)であること
「労務不能」とは、医師が就労は困難と判断している状態を指します。申請には医師の意見書(診断書)が必要で、主治医が「この期間は仕事に就けない」と判断することが前提となります。
うつ病の場合、外見では症状の重さが伝わりにくい側面があります。しかし「気分が沈む」「集中力が著しく低下している」「日常動作も困難な状態」などが継続していれば、医師は労務不能と判断します。自己判断で「まだ大丈夫だろう」と無理をする必要はありません。
3 連続する3日間(待期期間)を含む4日以上の欠勤があること
傷病手当金は、休業した日のうち最初の3日間(待期期間)は支給されません。4日目以降の欠勤から支給対象となります。この待期期間の3日間は、有給休暇・土日・祝日を問わず連続して欠勤した日として数えます。
たとえば月曜日から水曜日まで3日連続で欠勤した場合、木曜日以降の休業が傷病手当金の支給対象です。心療内科に通院しながら断続的に欠勤しているケースでは、この「連続3日間」の要件が満たされないことがあるため注意してください。
4 休業している間に給与の支払いがないこと
休業中に給与(有給休暇を含む)が支払われている場合、傷病手当金は減額または不支給となります。有給休暇を使い切った後から傷病手当金の支給が始まるケースが多いのはこのためです。ただし、給与が傷病手当金の支給額を下回る場合は差額が支給されます。
いくらもらえる?傷病手当金の計算方法
支給額の計算には「標準報酬月額」という考え方を使います。毎月の給与を一定の等級に分類したもので、健康保険料の算定にも使われる数値です。
✓ 計算式と具体例
1日あたりの支給額は次の式で算出されます。
(支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日)× 2/3
たとえば、支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額の平均が30万円であれば、1日あたりの支給額は「300,000 ÷ 30 × 2/3 = 6,667円」となります。月20日受給した場合は、133,340円が振り込まれる計算です。休職前の給与の約3分の2が支給されるイメージと考えると分かりやすいでしょう。
なお、被扶養者がいる場合の社会保険料の負担や住民税の支払いも引き続き発生するため、生活費の見通しは傷病手当金の受給額だけでなく、支出の見直しも含めて早めに計画しておくと安心です。
受給期間はいつまで続く?
傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算して1年6ヶ月(最長)です。2022年1月の法改正以降、この1年6ヶ月は「通算」で数えるルールになりました。
✓ 途中で復職・再発した場合の取り扱い
2022年1月以前は、復職した日から期間がリセットされず、「支給開始から暦の上で1年6ヶ月」で打ち切りとなっていました。法改正後は、就労して傷病手当金を受給していない日はカウントに含まれなくなりました。つまり、復職してしばらく働いた後に再び悪化して休職した場合でも、復職中の日数は1年6ヶ月の計算から除かれます。
うつ病は完全に回復したと感じても再燃しやすい傾向があります。「一度復職できたから傷病手当金はもう使えない」と思い込まず、再び受給が必要になった場合は主治医や勤務先の担当者に相談してください。
✓ まったく別の病気での再発・発症は新たに受給できる
以前うつ病で傷病手当金を受給し終えた後、別の病気(たとえば骨折や別の精神疾患)で仕事ができなくなった場合は、新たな傷病として傷病手当金を申請できます。同じうつ病の再発かどうかは医師の診断に基づいて判断されるため、症状が似ていても別の傷病と診断されれば新規の申請が可能なケースもあります。
傷病手当金を受け取れないケースと注意点
申請したのに「不支給」となる理由にはいくつかのパターンがあります。事前に把握しておくことで、申請前のミスを防げます。
- ✕ 国民健康保険加入者・フリーランス:健康保険(社会保険)の加入者が対象のため、自営業者やフリーランスが加入する国民健康保険には傷病手当金の制度がありません(一部自治体の独自給付を除く)。
- ✕ 待期期間(連続3日)が完成していない:断続的な欠勤の場合、連続3日間の欠勤が成立しないと支給が始まりません。
- ✕ 休業中に給与(有給休暇含む)が支払われている:傷病手当金の額以上の給与が出ていれば支給されません。有給消化中は傷病手当金の対象外となります。
- ✕ 業務起因と判断され労災扱いになる場合:業務上の過重労働やハラスメントが原因でうつ病を発症したと認定されれば、健康保険の傷病手当金ではなく労災保険の対象となります。
- ✕ 出産手当金・障害厚生年金との重複:出産手当金との同時受給はできません。障害厚生年金を受給している場合は傷病手当金が減額調整されます。
申請手続きの流れ
傷病手当金の申請には、本人・医師・事業主の3者が書類を記入して健康保険組合(または協会けんぽ)に提出します。月単位で申請するケースが一般的です。
主治医の診察を受け、労務不能の意見書を書いてもらう
申請書の「療養担当者記入欄」に主治医が記載します。心療内科や精神科への定期通院が前提となるため、通院を途切れさせないことが重要です。
勤務先(会社)に事業主記入欄の証明を依頼する
休業した期間・給与の支払い有無について会社の担当者に記載してもらいます。総務・人事部門に相談すると手続きを案内してもらえます。
健康保険組合・協会けんぽへ申請書を提出する
書類が揃ったら、加入している健康保険の窓口に提出します。会社を通して提出するケースと、本人が直接提出するケースがあります。
審査を経て指定口座に振り込まれる
提出から振込まで、おおむね1〜2ヶ月程度かかります。提出が遅れると振込時期もその分後ろにずれるため、できるだけ月末に申請書をまとめて提出する習慣をつけるとスムーズです。
退職後でも傷病手当金を受け取り続けられる条件
「うつ病で休職している間に退職することになった」というケースでも、条件を満たせば退職後も傷病手当金を継続して受給できます。ただし、次の条件をすべて満たしている必要があります。
退職後の傷病手当金は、在職中と同じ計算式で残りの受給期間(通算1年6ヶ月の範囲内)支給されます。退職に際して「傷病手当金を継続できるか」について、事前に会社の人事担当や加入している健康保険組合に確認しておくと安心です。
傷病手当金の受給期間が終わった後に使える制度
最長1年6ヶ月の受給期間が終わっても、まだ就労が難しいと感じている方のために、活用できる制度や支援機関があります。どの制度が自分に合っているかは、状態や希望する働き方によって異なります。
✓ 自立支援医療(精神通院医療)で通院費の負担を軽減する
心療内科や精神科への通院に必要な医療費の自己負担を、原則1割に軽減できる制度です。住所地の市区町村窓口で申請でき、うつ病や適応障害などが対象となります。傷病手当金の受給期間中から活用できるため、早めに申請しておくと医療費の負担を抑えながら治療に専念できます。
✓ 障害年金は傷病手当金と「重複」して受けられる場合がある
うつ病の状態が一定の基準に達していれば、障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)の対象になることがあります。傷病手当金との同時受給は可能ですが、障害厚生年金を受給している場合は傷病手当金が調整減額されます。傷病手当金の期間が終了した後の収入として検討できます。申請は主治医の診断書が必要で、社会保険労務士に相談すると手続きがスムーズです。
✓ 就労継続支援B型・就労移行支援で「働く準備」を整える
体調が回復しても「いきなりフルタイムで働くのは不安」という方には、障害者福祉サービスである就労継続支援B型や就労移行支援を活用する選択肢があります。これらは、就労を段階的に目指すための福祉サービスです。
就労継続支援B型では、無理のない時間から作業に取り組みながら工賃を得ることができます。就労移行支援は、一般就労を目指す方が職業スキルや生活リズムを整えながら就職活動を進める場として利用できます。どちらも、精神障害者保健福祉手帳がなくても主治医の意見書があれば利用できるケースがあります。
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ワークリンク尼崎の詳細を見る傷病手当金と失業保険(雇用保険)は同時に受け取れない
退職後に傷病手当金を受け取っている方から多い質問が「失業保険(雇用保険の基本手当)と同時にもらえますか?」というものです。結論からいうと、原則として同時受給はできません。
失業保険は「すぐに働ける状態にある」ことが前提であるのに対し、傷病手当金は「療養中で働けない」状態に支給されます。この2つの前提条件が矛盾するため、同時に受け取ることは制度上認められていません。
ただし、傷病手当金の受給期間が終了し、働ける状態に回復した段階で失業保険の申請をすることは可能です。ハローワークに傷病手当金の受給証明を持参し、受給期間の延長申請をしておくと、体調が回復してから改めて失業保険を受け取れる場合があります。退職後は早めにハローワークに相談することをおすすめします。
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