クローズ就労とは|オープン就労との違い・メリット・デメリット・選び方を解説
クローズ就労とは何か
クローズ就労とは、障害があることを就職先に開示せずに働くことを指します。精神障害・知的障害・発達障害(ADHD・ASD・LDなど)の診断を受けていたとしても、採用面接や入社後に会社側へその事実を伝える義務は法的には存在しません。そのため、一般求人に応募し、一般雇用枠で働くことが可能です。
ただし「義務がない」ことと「伝えないほうがよい」ことは別の話です。クローズ就労を選ぶかどうかは、自分の特性の程度・職種・職場環境・今後のキャリアビジョンなど、複数の要素を踏まえた上で判断する必要があります。
✓ 3つの就労パターンを整理する
「クローズ就労=一般雇用」「オープン就労=障害者雇用」と単純に対応させてしまいがちですが、実際はもう少し細かく分かれます。整理すると以下の3パターンです。
多くの方がイメージする「クローズ就労」は3番目のパターン、つまり一般枠で障害を非開示のまま働くことです。一方、障害があっても一般枠で採用されてから開示するという2番目のパターンも存在します。本記事では、一般的な意味でのクローズ就労(非開示での一般雇用)を中心に解説します。
クローズ就労を選ぶ理由:当事者の声から
障害を抱えながらクローズ就労を選んだ、あるいは選びたいと考える理由はさまざまです。レバレジーズ株式会社が精神障害者保健福祉手帳取得者を対象に実施した調査によると、クローズ就労を選んだ理由の1位は「障害を開示すると採用されにくいイメージがあるから(47.7%)」で、次いで「応募できる求人が限られると思ったから(45.0%)」「給与条件が悪化すると思ったから(34.3%)」と続きます。
「バレなければ問題ない」という楽観的な動機よりも、採用や待遇における現実的な不利を回避したいという切実な理由が多いことがわかります。発達障害は外見では判断できないことがほとんどであるため、開示しなければ一般枠で働けてしまう——その「できてしまう」という状況が、迷いを生む根本です。
また、同調査では手帳取得者の半数以上がクローズ就労経験を持つことも明らかになっています。クローズ就労は少数派の選択ではなく、多くの当事者が一度は通る道といっても過言ではありません。
クローズ就労のメリット
✓ 応募できる求人の幅が広がる
障害者雇用枠の求人数は一般求人と比べると圧倒的に少なく、職種も事務補助・軽作業・データ入力といった仕事が中心になりがちです。クローズ就労であれば、一般の転職市場に出ている全求人が選択肢になります。希望業界や職種へのこだわりが強い方にとって、この選択肢の広さは大きなメリットです。
✓ 給与水準が高くなる傾向がある
障害者雇用の求人は非正規雇用・短時間勤務が多く、給与が低くなりやすい構造があります。厚生労働省の調査によれば、週30時間未満の短時間勤務の労働者の割合は発達障害で39.3%にのぼり、勤務時間に比例して収入も抑えられます。フルタイムで一般枠の給与体系で働けるクローズ就労は、収入面では有利になることが多いです。
✓ キャリアアップの機会が得やすい
役職への昇進やプロジェクトリーダーへの抜擢など、キャリアを積み上げていく機会は一般雇用のほうが多い傾向にあります。障害者雇用では担当業務がある程度固定されることが多く、裁量のある仕事に挑戦しにくいという声も当事者から聞かれます。将来的に専門性を高めたい・マネジメント経験を積みたいという方には、クローズ就労のほうがキャリア形成の幅が広がりやすいことがあります。
✓ プライバシーが守られる
障害や疾患は、本来ひとりひとりの極めてプライベートな情報です。職場に開示しなければ、「障害者」というレッテルを貼られることなく、ひとりの社会人として職場に存在できます。誰にも知られたくない、診断名を職場に広めたくないという思いは、まったく自然な感情です。
クローズ就労のデメリット:定着率データが示す現実
クローズ就労には確かなメリットがある一方、無視できないデメリットも存在します。特に、就職後の「定着」という観点から見ると、データは厳しい現実を指し示しています。
・障害者求人(オープン就労):86.9%
・一般求人で障害を開示(オープン就労):49.9%
・一般求人で障害を非開示(クローズ就労):30.8%
クローズ就労者の定着率は「一般求人障害非開示」で30.8%にとどまります。つまり、クローズで就職した方の約7割が1年以内に職場を離れているということです。これは数字として重く受け止める必要があります。
では、なぜクローズ就労は定着が難しいのか。理由は複合的ですが、核心を突くと「自分の特性に起因する困難を、自分一人で対処し続けなければならない」という構造的な問題に行き着きます。
✓ 合理的配慮が受けられない
2024年4月から施行された改正障害者差別解消法により、民間企業でも合理的配慮の提供が義務となりました。ただし合理的配慮は、障害を開示した上で会社に申し出て初めて機能する仕組みです。クローズ就労の場合、配慮を求める根拠がないため、たとえ苦手な業務や環境があったとしても「他の社員と同じ条件」で働き続けなければなりません。
ADHDの特性を持つ方であれば、締め切り管理のサポートや作業の優先順位化の補助。ASDの方であれば、業務指示の文書化や感覚的な配慮。こうした「ほんの少しの工夫」が職場定着を大きく左右するにもかかわらず、クローズ就労ではそれを求めにくい状況が続きます。
✓ 「隠している」というストレスが積み重なる
診断名を伏せて働くことは、日常の会話や業務の随所で緊張を生みます。同僚との雑談で診断に触れそうになった瞬間、失敗を指摘されたときに理由を説明できない状況、支援機関の利用を会社に知られたくないというプレッシャー——こうした慢性的なストレスは、じわじわと精神的な負担を大きくしていきます。
自分の特性をセルフケアでカバーしながら働くことは、特性の軽い方や準備が十分できている方には可能です。しかし多くの場合、「隠す」エネルギーが業務パフォーマンスにも影響を及ぼしていきます。
✓ 就労支援機関との連携が難しくなる
オープン就労の場合、就労移行支援事業所や支援員が企業との間に立って、定期的な面談や職場環境の調整を行うことができます。クローズ就労では、こうした三者連携の枠組みを使うことが難しく、万が一職場でトラブルが起きたときも自力で対処せざるを得ません。問題が深刻化してから発覚するケースが多く、それが高い離職率につながっている側面があります。
オープン就労との比較:何が変わるか
クローズ就労とオープン就労を比較するとき、「給与が高いか低いか」という軸だけで判断してしまうのは危険です。より本質的な比較軸は「長く安定して働き続けられるか」という点にあります。
この表を見ると、クローズ就労は「入り口」の条件が有利で、「継続」の条件では不利になりやすいことがわかります。「とにかく採用されたい」という短期的な目線と、「長期にわたって自分らしく働きたい」という中長期的な目線では、選ぶべき戦略が変わってきます。
クローズ就労が向いている人・オープン就労が向いている人
クローズ・オープンのどちらが「正解」かは人によって異なります。重要なのは、自分の特性と希望する働き方を客観的に把握した上で選択することです。参考として、それぞれに向きやすい状況を整理します。
✓ クローズ就労が向きやすい状況
クローズ就労が比較的うまく機能しやすいのは、以下のような条件が揃っているケースです。
- ✓ 特性による困難が比較的軽度で、セルフケアで対処できている
- ✓ 自分の特性を理解しており、職場での対処法を確立している
- ✓ 特定の職種・業界へのこだわりが強く、障害者求人ではその選択肢がない
- ✓ 業務内容と自分の特性がマッチしており、苦手な状況が発生しにくい
✓ オープン就労が向きやすい状況
- ✓ 特性による苦手(コミュニケーション・タスク管理・感覚過敏など)が職場で表れやすい
- ✓ 過去にクローズ就労で早期離職を繰り返した経験がある
- ✓ 「隠している」という精神的な負荷が大きく、それ自体がストレスになっている
- ✓ 長期的な安定就労を最優先にしており、給与や職種への拘りより定着を重視している
クローズ就労で長く働くために意識すること
「様々な事情からクローズ就労を選ぶ」という判断をしたとしても、その選択が誰かに咎められるものでは当然ありません。大切なのは、クローズ就労のリスクを事前に理解した上で、それを軽減するための準備を十分に積んでおくことです。
✓ 自己理解を徹底する
自分がどのような状況で困るのか、どのような環境なら力を発揮しやすいのかを具体的に把握しておくことは、クローズ就労の前提条件です。発達障害の特性は人によって大きく異なります。「ADHD」という診断名が同じでも、時間管理が苦手な人もいれば、衝動性が問題の中心になっている人もいます。
自己理解が深いほど、「この業務なら自分でカバーできる」「この環境は自分の特性と合わない」という判断が就職活動の段階でできるようになります。その判断精度が、クローズ就労での定着率を大きく左右します。
✓ 職場外の支援リソースを整えておく
クローズ就労では職場内のサポートを求めにくいからこそ、職場外でのサポート体制が命綱になります。定期的に通える主治医、相談できるカウンセラーや支援員、同じ特性を持つ仲間のコミュニティ——こうした「職場の外に存在する安全網」を就職前から用意しておくことが重要です。
就労後のフォローを行っている支援機関であれば、クローズ就労後も個別相談を継続してくれるケースがあります。「就職したら支援が終わり」ではなく、継続的に関われる関係性を就職前に築いておくことが理想的です。
✓ 特性に合った仕事・環境を徹底的に選ぶ
クローズ就労で職場定着を実現している方に共通するのは、「自分の特性が活かせる仕事を選んでいる」という点です。ADHDに典型的な「過集中」の特性は、突発的なタスクが少なく深い集中を要する仕事では強みに変わります。ASDの「細部へのこだわり」は、品質管理やシステム開発の領域で抜群の力を発揮することがあります。
弱みをカバーしながら働くのではなく、強みが自然に発揮される場を選ぶ——この発想の転換が、クローズ就労においても長期定着の鍵を握っています。プラスイノベーションが10年以上の現場で培ってきた知見も、まさにこの点に集約されます。
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「強みが活きる仕事」を見つけることが、クローズ・オープン以前の問題
クローズかオープンかという議論は重要ですが、もう一段上の視点から考えると、どちらを選んだとしても「自分の特性と仕事の相性」が定着の根幹を左右します。配慮がある環境でも、苦手なことを強制され続ければ長くは続きません。反対に、クローズ就労でも、特性と仕事がマッチしていれば驚くほど力を発揮できることがあります。
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まとめ:クローズ就労は「戦略」であって「逃避」ではない
クローズ就労は、決して「障害を隠して逃げる」行為ではありません。自分の状態と職場環境を冷静に見極め、戦略的に選択した結果であれば、それは立派な就労のあり方です。ただし、定着率のデータが示すように、準備なしのクローズ就労は高い確率で早期離職につながります。
重要なのは次の3点です。まず自己理解を深め、自分の特性が何に影響するかを知ること。次に、特性が活かせる仕事・職場環境を選ぶこと。そして、職場の外に相談できる支援リソースを整えておくこと。この3つが揃っていれば、クローズ就労であっても長期的な定着は十分に実現できます。
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