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コラム

ディスレクシアとは?読み書きが苦手な子どもへの理解と支援のあり方

2026.02.20

ディスレクシアとは?読み書きが苦手な子どもへの理解と支援のあり方

「うちの子、なんで字が読めないんだろう」「何度教えても書き間違える。怠けているのか、努力が足りないのか」――そんな悩みを抱える保護者の方は少なくありません。しかし、その背景にあるのは「怠け」でも「頭の悪さ」でもなく、ディスレクシア(読み書き障害)という発達特性である可能性があります。ディスレクシアは国際的にも広く認知された学習障害のひとつで、知的能力とは切り離して考える必要があります。この記事では、ディスレクシアの定義から症状・原因・診断・支援まで、子どもの読み書きに悩む保護者の方が知っておきたい情報をまとめています。

ディスレクシアとは何か

ディスレクシア(Dyslexia)は、日本語では「読字障害」や「難読症」「失読症」とも呼ばれる発達性の学習障害です。知的能力や視力・聴力には問題がないにもかかわらず、文字の「読み」や「書き」に著しい困難を抱える状態を指します。

IDA(国際ディスレクシア協会)の定義によれば、ディスレクシアは神経生物学的な起源を持つ特定の学習障害であり、正確かつ流暢な単語認識の困難、スペリング・解読能力の低さを特徴とします。これらの困難は音韻処理機能の欠陥から生じており、知的能力や従来の学習指導との不一致によって特徴づけられます。

日本では「学習障害(LD)」の下位分類として位置づけられており、文部科学省の定義でも「聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する」のうち一つ以上に著しい困難を示す状態とされています。ディスレクシアはそのなかでも「読む・書く」に特化した困難です。

💡 POINT
ディスレクシアは「勉強不足」や「やる気のなさ」とは無関係です。脳の情報処理のしかたに違いがあるため、通常の学習方法では読み書きが定着しにくい場合があります。早期に理解し、適切な支援を行うことが子どもの自己肯定感を守ることにつながります。

「失読症」「難読症」との違いは?

ディスレクシアを「失読症」や「難読症」と呼ぶこともありますが、厳密には区別される場合があります。脳卒中や事故などによって後天的に読み書き能力を失うケースは「後天性ディスレクシア」または「失読症」と呼び、生まれつきの発達性ディスレクシアとは原因が異なります。子どもの場合に問題となるのは、ほぼ「発達性ディスレクシア」です。

ディスレクシアの症状と特徴

ディスレクシアの症状は大きく「読字障害」と「書字障害」に分けて整理できます。ただし、すべての症状が一人に当てはまるわけではなく、程度も人によってさまざまです。

読字障害の主な症状

読み取りに関する困難は、音韻処理(文字と音の対応づけ)の問題から生じることが多く、以下のような形で現れます。

  • 文字を一字ずつたどり読みしてしまい、音読が極端に遅い
  • 「あ」と「お」、「め」と「ぬ」など形の似た文字を読み間違える
  • 文章を読んでいる途中で行が分からなくなる(行を飛ばす)
  • 漢字が読めない、または読み方がいつまでも覚えられない
  • 文字は読めても文章の意味や内容を理解することが難しい(読解困難)

ここで重要なのは、「文字は読めているように見えても、脳の中で意味と音に変換する処理が追いついていない」場合があるという点です。表面的に読めているように見えても、理解が伴っていないことがあります。

書字障害(書くことへの困難)

読字障害と書字障害は同時に現れることが多く、国立成育医療研究センターでも「読字に困難があれば当然書字にも困難がある」としています。書きに関しては次のような特徴が見られます。

  • 鏡文字になる(「b」と「d」、「p」と「q」を反転して書く)
  • 字の形が著しく崩れる、マス目に収まらない
  • 板書のスピードに追いつけず、黒板を写すことができない
  • 送り仮名や助詞を抜かして書いてしまう
  • 同じ漢字を何度練習しても覚えられない

「何度書いても漢字が覚えられない」ことは、多くの場合「反復練習の量が足りない」という問題ではなく、視覚情報を記憶として保持・再現するプロセス自体に課題があることを意味します。そのため、通常の「繰り返し書く」練習が効果的でないケースがあるのです。

ディスレクシアの原因

ディスレクシアが「なぜ起きるのか」は、現在も研究が進んでいる分野です。ただ、現時点では以下の要因が複合的に関係していると考えられています。

脳機能と遺伝的背景

MRI研究などにより、ディスレクシアのある人の脳では、文字を音に変換するとされる左脳の特定領域(側頭頭頂部・後頭側頭部など)の活性化パターンが通常とは異なることが明らかになっています。この脳機能の差異は生まれつきのものであり、後天的な環境だけで生じるわけではありません。

また遺伝との関連も強く示唆されており、Wikipediaのディスレクシア項目でも「DCDC2やKIAA0319など特定の遺伝子との関連が示されている」と記載されています。保護者のどちらかがディスレクシアである場合、子どもにも現れやすい傾向があります。

音韻認識の困難というコアな問題

多くの研究者が指摘するのが「音韻認識(フォノロジカル・アウェアネス)」の問題です。音韻認識とは、言葉を音の単位に分解する認知機能のことで、たとえば「りんご」という言葉が「り・ん・ご」という3つの音から成ることを理解する能力です。

文字を読むには「文字の形 → 対応する音 → 意味」という変換処理が必要ですが、この音韻認識が不安定だと変換がうまくいかず、読み書きに時間がかかったり誤読・誤字が生じやすくなります。これがディスレクシアにおける読み書き困難の、もっとも根本的なメカニズムだとされています。

⚠️ 注意事項
ディスレクシアは「視力」の問題ではありません。眼科的に問題がなくても、脳が文字情報を処理する段階で困難が生じます。眼鏡で解決できる性質のものではないため、早めに専門家に相談することが重要です。

ディスレクシアと知的障害の違い

ディスレクシアについて理解する上で、知的障害との違いを正確に把握しておくことが欠かせません。

知的障害は全般的な知的機能に低下が見られるのに対し、ディスレクシアは読み書きという特定の領域にのみ困難があるという点が根本的に異なります。知能検査(IQ検査)では平均以上の結果を示す子どもがディスレクシアと診断されることは珍しくなく、「勉強はできるはずなのに、字だけがどうしても読めない」という状態がまさにその典型です。

ディスレクシア 知的障害
知的機能 平均〜平均以上のことが多い 全般的に低下
困難の領域 読み書きに特化 学習・生活全般に広がる
会話・コミュニケーション 通常は問題ない 言語理解にも困難が生じやすい
診断分類 限局性学習症(SLD) 知的発達症

ディスレクシアはしばしば「勉強をさぼっている」「注意力がない」と誤解されます。しかし実際には、読み書きという行為に脳が余分なエネルギーを費やすため、授業中に疲弊しやすく、それが「集中していない」ように見えることがあります。学業面の挫折が積み重なると自己肯定感の低下につながるため、早期の気づきと周囲の正しい理解が子どもの将来にとって大きな意味を持ちます。

ディスレクシアの診断について

何歳から診断できるのか

ディスレクシアの診断は、読み書きの学習が本格的に始まる小学校低学年以降(一般的には6〜7歳以降)に行われることが多いです。幼児期には「ひらがながなかなか覚えられない」「絵本の文字に関心を示さない」といったサインが見られることもありますが、診断の確定は就学後になるケースがほとんどです。

軽度のディスレクシアは、学年が上がって文章量や漢字の難度が増すにつれて顕在化することもあります。「低学年では目立たなかったが、中学年以降に突然つまずいた」という報告も珍しくありません。

どこで診断・検査を受けられるか

診断は主に以下の機関で受けることができます。

  • 小児科・小児神経科:発達の遅れや学習困難の初期相談として
  • 精神科・心療内科:成人の場合や、二次障害(うつ・不安)が疑われる場合
  • 発達支援センター・療育センター:自治体が設置する公的な相談・検査窓口
  • 学校内の特別支援コーディネーター・スクールカウンセラー:教育的な視点での最初の相談先として

診断には WISC(ウェクスラー式知能検査)などの知能検査のほか、読み書きの速度・正確さを測る課題が用いられることがあります。診断名としては「限局性学習症(SLD)」と表記されることが多く、そのなかに「読字に関する困難」「書字表出に関する困難」として記載されます。

ディスレクシアへの支援と対処法

ディスレクシアは完全に「治る」性質のものではありませんが、適切な支援によって日常生活や学習上の困難を大幅に軽減できます。支援の基本的な考え方は「弱い部分を無理に鍛えること」ではなく、「強い機能を活かして補う」というアプローチです。

家庭でできる工夫

音声・視覚の活用が基本です。テキストを音読してくれるアプリ(読み上げ機能)や、タブレットを使ったデジタル教科書は、読むことへの負荷を大きく下げます。文部科学省も「合理的配慮」の一環として、デジタル教材の活用を認めています。また、漢字を書く練習をただ繰り返すよりも、声に出しながら指でなぞる、アニメーションで書き順を確認するといった多感覚を組み合わせた学習のほうが定着しやすい場合があります。

また、子どもが「できない自分」と向き合い続けることで自己肯定感が下がりやすい点には特に注意が必要です。読み書き以外の得意なこと――絵を描く、組み立てる、プログラミング、スポーツなど――で成功体験を積み重ねることが、精神的な安定と学習意欲の維持につながります。

学校での合理的配慮

2016年に施行された「障害者差別解消法」により、公立学校では障害のある児童への合理的配慮が義務化されました。ディスレクシアのある子どもに対して学校が実施できる配慮の例としては、試験時間の延長、板書の写真撮影の許可、タブレットでのテスト回答、ルビ付きプリントの使用などが挙げられます。

大学入試においても、一部の大学では合理的配慮として試験時間の延長や口頭試問への変更が認められるケースが増えています。早めに学校や支援機関に相談しておくことで、進路の選択肢が広がります。

「うちの子、もしかしてディスレクシア?」と感じたら、専門スタッフへの相談がいちばんの近道です。
Kid'sTECH(キッズテック)では、LD・ADHD・ASDなど発達特性のあるお子さまへの個別支援を行っています。

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ディスレクシアのある人の「強み」に目を向ける

ディスレクシアについて語るとき、どうしても「できないこと」に焦点が当たりがちです。しかし、見方を変えると別の景色が見えてきます。

ディスレクシアのある人の多くは、三次元的な空間認識能力が高い、物事をビジュアルで捉える力が優れている、創造性・発想力が豊かという特性を持つことが指摘されています。建築家、映像クリエイター、起業家、エンジニアなど、文字処理よりも空間・視覚的思考が求められる分野で活躍する人にディスレクシアを持つ方が多いとも言われています。

では、なぜそう言えるのか。ディスレクシアのある人の脳は、文字を「記号として機械的に処理する」部位の活用が少ない分、イメージや文脈全体を俯瞰的にとらえる処理が発達しやすいとされています。「読む」という特定の処理に難しさがある一方で、全体像を直感的につかむ能力が補完的に高くなることがあるのです。

保護者様の声

「読み書きが苦手でも、ゲーム制作のために複雑な文章や長い指示書を読むようになりました。子どもの可能性が広がるかもしれないと期待しています。」

— 中学2年生(ASD)の保護者様(Kid'sTECH蒲田教室)

この声が示しているのは重要な事実です。「何かに強く興味を持てる文脈」があれば、読み書きへのハードルも乗り越えられる場合があるということ。ディスレクシアのある子どもへの支援は、「苦手を減らす」だけでなく、「好きなことを通じて力を引き出す」という視点が有効に働くことがあります。

IT教育がディスレクシアの子どもにもたらす可能性

プログラミングをはじめとするIT学習は、ディスレクシアのある子どもとの相性が良い場合があります。その理由はいくつかあります。

まず、プログラミングはコードというシンプルなルール体系で動くため、複雑な国語的読解よりも「ルールを理解して動かす」ことに集中できます。次に、ゲームを作る・アプリを動かすという成果がすぐに視覚で確認できるため、成功体験が積みやすい。さらに、ビジュアル的な論理構造(フローチャートやブロックプログラミング)は、空間的思考が得意なディスレクシアのある子どもの強みを活かしやすい形式です。

株式会社プラスイノベーションが運営する放課後等デイサービス「Kid'sTECH(キッズテック)」は、日本初のIT療育型放課後等デイサービスとして2016年に設立されました。LD・ADHD・ASDなど発達特性のある小学1年生〜高校3年生を対象に、プログラミングを療育ツールとして活用しながら、子どもたちが「自分にできること」を発見できる環境を提供しています。

  • 臨床心理士・公認心理師が常駐し、特性に応じた個別プログラムを設計
  • 「ゲーム開発」「ITプログラミング」「ITデザイン」の3コースから選択可能
  • トークンエコノミー法で「学びの見える化」を実現し、自己肯定感を育む
  • 受給者証を利用して通所可能(兵庫県尼崎市・東京都大田区ほか)

読み書きの困難はあっても、デジタルの世界には無限の可能性があります。「書けないから、できない」ではなく、「違うやり方で、もっとできる」——その視点を届けることが、プラスイノベーションのサービスが目指すものです。

まとめ:ディスレクシアのある子どもへの支援で大切なこと

ディスレクシアは、知的能力とは切り離された読み書きに特化した発達特性です。脳機能や遺伝的な背景が関係しており、本人の努力不足が原因ではありません。音韻処理の困難が根本にあるため、単純な反復練習より、音声読み上げやデジタルツールを活用した「補う」支援のほうが効果的なケースも多くあります。

診断は小学校入学後が中心で、小児科や発達支援センター、学校のスクールカウンセラーなどが相談の入口となります。合理的配慮を学校や受験機関に申請することで、学業面のハンデを軽減することも可能です。

そして何より大切なのは、子どもが「自分にはできない」という経験ばかりを積まないよう、得意なことや好きな活動を通じた成功体験を丁寧に積み重ねることです。それが結果として、読み書きへの挑戦意欲を引き出す土台にもなります。

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