情緒不安定とは?原因・症状・対処法と心を安定させるための考え方
📋 目次
情緒不安定とはどんな状態か
情緒不安定とは、感情の起伏が激しく、気分が短時間で大きく変動する精神状態を指します。医学的な診断名ではなく、あくまで「状態」を表す言葉です。喜怒哀楽の波は誰にでもありますが、情緒不安定の場合はその振れ幅が大きく、しかも本人の意思ではコントロールしにくい点が特徴です。
重要なのは、「情緒不安定=性格が悪い」「意志が弱い」ではないという点です。感情調節の難しさは、脳の神経システムやホルモン、睡眠・栄養状態、環境ストレスなど複数の要因が絡み合って生じます。自分を責めるのではなく、まず「何が起きているのか」を理解することが回復への第一歩です。
情緒不安定のおもな症状
情緒不安定のあらわれ方は人によって異なります。以下に代表的な症状を挙げますが、いくつかが重なることも珍しくありません。
✓ 急に涙が出る・理由もなく悲しくなる
特定の出来事がなくても涙がこぼれたり、ちょっとしたことで胸がいっぱいになったりします。「なぜ泣いているのかわからない」という感覚が続く場合、感情調節の機能が低下しているサインかもしれません。ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れが背景にあることが多く、特に女性では月経周期との関連が見られます。
✓ 意味もなくイライラする・怒りっぽくなる
些細な出来事に対して強い怒りを感じたり、後から「なぜあんなことで」と後悔したりするケースです。イライラは睡眠不足や慢性的なストレスによって扁桃体(感情を処理する脳の部位)が過敏になることで起きやすくなります。怒りそのものが問題ではなく、その強さと持続時間がコントロールしにくくなっているところがポイントです。
✓ 気分の浮き沈みが激しく、落ち着かない
朝は元気だったのに昼には気力を失う、数時間前とはまるで別人のように感情が変わる——こうした急激な気分の変動は、情緒不安定の中心的な特徴の一つです。双極性障害(躁うつ病)では数日〜数週間単位での気分の波が見られますが、情緒不安定では一日のうちに何度も変動することもあります。
✓ 衝動的な行動・集中力・判断力の低下
感情が先走り、後先を考えずに行動してしまうことも情緒不安定のあらわれです。また、気持ちが安定しないと思考力も低下し、仕事や学業でのミスが増えたり、「何も手につかない」という感覚が生じます。このような認知機能の変化は本人が気づきにくく、「怠け」と誤解されることも少なくありません。
情緒不安定になる原因
情緒不安定の原因は、大きく「身体的要因」と「精神的・環境的要因」に分けられます。どちらか一方だけということは少なく、複数の要因が重なって症状が強まるケースが大半です。
✓ 身体的な原因
睡眠不足は感情調節に直結します。睡眠が不足すると前頭前皮質(理性や感情制御を担う部位)の働きが落ち、扁桃体が過剰に反応しやすくなることが研究で示されています。また、ホルモンバランスの変化も大きな要因で、女性の場合は月経前・産後・更年期に情緒不安定が生じやすくなります。さらにカフェインやアルコールの過剰摂取は自律神経を乱し、感情の波を大きくする要因となります。
✓ 精神的・環境的な原因
職場や学校でのストレス、人間関係のトラブル、環境の急激な変化(転職・引越・育児など)は、精神的な緊張状態を長引かせます。慢性的なストレスはコルチゾール(ストレスホルモン)の過剰分泌を招き、脳の感情調節機能そのものを変化させます。また、精神疾患の一症状として情緒不安定があらわれることもあり、この場合は根本疾患の治療が必要です。季節の変わり目(特に春・秋)に感情が乱れやすくなる方も多く、日照時間の変化がセロトニン分泌に影響することがその一因とされています。
情緒不安定になりやすい人の特徴
情緒不安定になりやすいかどうかは、その人の気質や認知のクセ、おかれた環境によって異なります。特定のパターンを持つ方が、同じストレスにさらされたときにより強く反応しやすい傾向があります。
物事を否定的・悲観的に解釈しやすい人は、小さなつまずきを「自分の全否定」と受け取りやすく、感情の振れ幅が大きくなりがちです。また、完璧主義の傾向がある人は理想と現実のギャップにストレスを感じやすく、「もっとちゃんとしなければ」という自己批判のループに陥りやすい点があります。
感受性が高い(HSP的な特性を持つ)人も、外部からの刺激を強く受け取るため疲弊しやすく、感情の波に飲み込まれやすい傾向があります。さらに、周囲からの十分なサポートが得られていない環境は、孤立感や無力感を強め、情緒不安定を長引かせる要因になります。
情緒不安定と関連する病気
情緒不安定が長期間続く、あるいは日常生活に大きな支障が出ている場合、背景に精神疾患や身体疾患が関係していることがあります。「気のせい」と片づけずに、以下のような疾患との関連を念頭に置くことが大切です。
✓ うつ病・適応障害
うつ病は「ずっと落ち込んでいる」というイメージが強いですが、実際には感情の波が激しく「急に泣けてくる」「些細なことで怒れる」といった情緒不安定が前景に出ることもあります。特に初期や軽症のうつ病では、落ち込みよりもイライラや不安が目立つケースもあり、見逃されがちです。適応障害は特定のストレス因子に対する過剰反応として情緒不安定があらわれ、原因となるストレスが解消されれば症状が改善する傾向があります。
✓ 双極性障害(躁うつ病)
気分が高揚している時期(躁状態)と落ち込んでいる時期(うつ状態)が繰り返す病気です。気分の波の大きさと持続期間がうつ病とは異なり、躁状態のときは睡眠が少なくても活動的で、衝動的な行動(浪費・無計画な行動など)をとりやすくなります。双極性障害は適切な薬物療法が有効で、精神科での診断が必要です。
✓ 自律神経失調症
自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが乱れると、動悸・頭痛・倦怠感といった身体症状とともに情緒不安定が生じます。身体症状が目立つため「内科的な問題」と思い込んで受診しても異常が見つからず、「自律神経失調症かもしれない」と気づくまでに時間がかかることがあります。
✓ 月経前症候群(PMS)・月経前不快気分障害(PMDD)
月経前の1〜2週間に情緒不安定が顕著になる場合、PMSまたはPMDDの可能性があります。PMSは身体・精神両面の症状が現れますが、PMDDはとりわけ精神症状(気分の落ち込み・強い怒り・不安感)が中心で、日常生活への影響が大きいとされています。日本産科婦人科学会によれば、PMS症状を訴える女性の割合は月経のある女性の約70〜80%に上るとされ、そのうち重症型であるPMDDは約5〜8%と報告されています。
✓ 境界性パーソナリティ障害(BPD)
BPDは、見捨てられることへの強い恐怖、感情のコントロール困難、衝動的な行動、自己像の不安定さなどを主な特徴とするパーソナリティ障害です。情緒不安定が中核症状の一つであり、対人関係において激しい感情の変動が起きやすいため、本人も周囲も消耗しやすい状態です。
情緒不安定のときの対処法
情緒不安定への対処は、「自分でできること」と「専門家の力が必要なこと」の二段階で考えると整理しやすくなります。まずセルフケアから始め、それでも改善しない場合は迷わず相談することが重要です。
✓ 睡眠・生活リズムを整える
最初にして最も効果的なセルフケアは、睡眠です。Nature Human Behaviour誌に掲載された研究(2018年)では、睡眠不足が感情の反応性を高め、ネガティブな刺激への脳の反応が最大60%増加することが示されています。「7〜8時間の睡眠確保」「就寝・起床時間を一定に保つ」「就寝前1時間はスマートフォンを控える」といった基本的なことから始めましょう。規則正しい生活リズムは自律神経のバランスを整え、ホルモン分泌を安定させる土台となります。
✓ セルフモニタリングで感情を「見える化」する
感情の波をコントロールするためには、まず「自分がどんなとき、どんな感情になるか」を把握することが先決です。気分の変化を日記やアプリで記録する「セルフモニタリング」は、認知行動療法の基本技法の一つでもあり、感情とトリガーの関係を客観視する訓練になります。「今日は疲れていたから怒りやすかった」「月経前は毎回同じパターン」と気づくだけで、自分の感情に振り回されにくくなります。
✓ 適度な運動とセロトニンの促進
ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、セロトニンの分泌を促すことが知られています。セロトニンは「幸福感」に関係する神経伝達物質で、不足すると気分の落ち込みやイライラが増しやすくなります。また、日光を浴びることもセロトニン産生に有効です。特別なジムに通う必要はなく、毎日20〜30分程度の散歩から始めてみてください。
✓ マインドフルネスで「今この瞬間」に戻る
マインドフルネスとは、過去への後悔や未来への不安から離れ、今この瞬間の感覚に意識を向ける実践です。「感情に飲み込まれている」状態から一歩引き、「今、私は怒りを感じているな」と観察者の視点を持つことで、感情の激しさが和らぎやすくなります。呼吸法(腹式呼吸を4秒吸って、8秒かけてゆっくり吐く)も即効性のある方法の一つです。
✓ 専門家への相談・医療機関の受診
以下のような状態が続く場合は、精神科・心療内科への受診を検討してください。「セルフケアを試みたが2週間以上改善しない」「仕事や日常生活に支障が出ている」「自分や他者を傷つけたいという衝動がある」。受診は「重症じゃないから行くべきでない」ということはなく、早めに相談するほど対処の選択肢が広がります。
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発達特性と情緒不安定の深い関係
一般にはあまり知られていませんが、情緒不安定とADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの発達特性には、深い関連があります。発達特性のある方が情緒不安定を経験しやすいのは、決して「気持ちが弱い」からではなく、脳の情報処理の特性に理由があります。
✓ ADHDと感情調節の困難
ADHDでは、感情の調節機能に関わる前頭前皮質の発達・機能に特徴があることが多く、怒りや喜びなどの感情が強く・素早く湧きやすい傾向があります。ある刺激に対して激しく反応した後、比較的短時間で落ち着くという波のパターンが見られることもあります。ADHDと感情調節困難に関する研究(Barkley, 2015)では、ADHDの方の約70%が感情調節の困難を報告しており、これは診断基準には含まれていないものの、生活への影響が大きい症状とされています。
✓ ASDと感覚過敏・カモフラージュ疲れ
ASDの方は、音・光・触感などへの感覚過敏から日々多くのエネルギーを消耗します。また、社会的な場面で「定型発達者らしく振る舞う」カモフラージュ(マスキング)を続けることで、職場や学校では落ち着いて見えても帰宅後にエネルギー切れを起こし、感情の調節が難しくなる「情緒崩壊」が起きやすくなります。これは「家では荒れるのに外では問題ない」という状態として周囲に誤解されることもあります。
✓ 発達特性のある方に必要な支援とは
発達特性による情緒不安定への対処は、一般的なセルフケアに加え、特性を理解したうえでのアプローチが必要です。「苦手を克服させる」「みんなに合わせさせる」という方向ではなく、その人が持つ特性を理解し、強みとして活かせる環境を整えることが、長期的な情緒の安定につながります。
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「学校では多動が激しくじっと座ることができず悩んでいましたが、Kid'sTECHのシンプルな教室環境では集中して過ごすことができています。プログラミングを通じて、息子の新しい可能性を発見できました。」
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まとめ|情緒不安定に気づいたら、ひとりで抱え込まないでください
情緒不安定は、感情の起伏が激しく日常生活に影響を与える「状態」であり、性格や意志の問題ではありません。睡眠不足・ホルモンバランスの乱れ・慢性的なストレス・発達特性など、さまざまな要因が絡み合って生じます。まずセルフモニタリングや睡眠・生活リズムの改善から始め、症状が続く場合は精神科・心療内科や専門の支援機関への相談を検討しましょう。
特に、「発達特性があるかもしれない」「子どもの頃からずっと感情のコントロールが苦手」と感じている方は、特性に合わせた専門的なアプローチが大きな助けになります。苦手なことを無理に矯正するのではなく、自分の特性を理解して活かせる環境を見つけることが、情緒の安定への近道です。
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