自立支援医療制度とは|対象者・自己負担額・申請手続きを詳しく解説
自立支援医療制度の概要と背景
自立支援医療制度は、2006年施行の障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)によって整備されました。それ以前は「精神保健福祉法」「身体障害者福祉法」「児童福祉法」とばらばらに定められていた公費医療の仕組みを統合し、3つのカテゴリに整理したものです。
制度の目的は、障害のある方が自立した日常生活を送れるよう、継続的な医療にかかる費用の自己負担を軽減することです。精神疾患の通院、身体障害のある方の手術や機能回復訓練、障害のある子どもの育成医療という3つの区分それぞれに対応しています。
3つの種類と対象者
自立支援医療は用途ごとに3種類に分かれており、それぞれ申請窓口や対象となる医療の範囲が異なります。
① 精神通院医療
3種類の中で最も利用者数が多いのが「精神通院医療」です。精神疾患のために継続的に精神科・心療内科への通院が必要な方が対象となります。
対象となる疾患は、うつ病や統合失調症、双極性障害、てんかんに加え、ADHDや自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害も含まれます。厚生労働省の定める「精神医療を続ける必要がある病状」と認定されれば、通院にかかる医療費(診察・薬・訪問看護など)の自己負担が軽減されます。
申請窓口は市区町村の窓口です。精神障害者保健福祉手帳の有無とは無関係に申請できる点も、利用のしやすさにつながっています。
② 更生医療
18歳以上の身体障害者手帳を持つ方を対象に、その障害を軽減・除去するための治療費を支援する制度です。人工透析(腎臓機能障害)、心臓手術、肝臓移植などが代表的な対象医療として挙げられます。申請窓口は市区町村ですが、身体障害者手帳の取得が前提となります。
③ 育成医療
18歳未満の児童を対象に、身体障害や手術によって改善が見込まれる状態にある場合の医療費を支援します。心臓疾患や先天性の肢体不自由など、将来の自立を支えるための治療が主な対象です。申請は市区町村(政令指定都市・中核市の場合は市)が窓口になります。
自己負担額の仕組みを理解する
自立支援医療の自己負担は「原則1割」と「月額上限額の設定」という2つの仕組みで構成されています。どちらか低い方が実際の負担額になるため、高額な治療であっても月に一定額を超えて支払うことはありません。
月額上限は世帯の所得区分によって段階的に設定されています。以下の表は厚生労働省が定める区分の概要です。
一定所得以上の区分は原則として対象外ですが、「重度かつ継続」と認定された場合は例外的に適用されます。高額な医療費が継続的に必要な状態であれば、所得が高い世帯でも上限月額20,000円という経過的な特例が設けられています(2025年時点)。詳細は厚生労働省の公式ページで確認できます。
申請手続きの流れ
申請は主に「精神通院医療」を想定して説明します。更生医療・育成医療の場合も基本的な流れは共通ですが、必要書類の内容が異なります。
かかりつけ医に相談・診断書を依頼
申請には医師による「診断書(自立支援医療用)」が必要です。まず通院している精神科・心療内科の主治医に制度の利用を伝え、診断書の作成を依頼します。診断書の様式は自治体によって異なる場合があるため、窓口で事前に確認しておくと手間が省けます。
市区町村の窓口に必要書類を提出
申請に必要な主な書類は、認定申請書・医師の診断書・保険証の写し・世帯の所得を確認する書類(市区町村民税の課税証明書など)です。マイナンバーカードを受給者証として活用できる自治体も増えています(2024年から段階的に整備中)。
受給者証の交付を受ける
審査が通ると「自立支援医療受給者証」が交付されます。交付までの期間は自治体によって異なりますが、1〜3か月程度かかるのが一般的です。申請中に支払った医療費は、受給者証の交付後に自治体への申請で払い戻し(償還払い)を受けられます。
指定医療機関に受給者証を提示して利用
自立支援医療は、受給者証に記載された「指定自立支援医療機関」のみで適用されます。病院・調剤薬局・訪問看護ステーションそれぞれを受給者証に登録する必要があります。転院や薬局の変更を希望する場合は、事前に変更申請が必要です。
✓ 有効期間と更新手続き
受給者証の有効期間は1年間です。継続利用するには有効期限の3か月前から更新申請を行う必要があります。更新時にも医師の診断書が必要になるケースがあります(自治体によっては2年に1回の診断書で対応可能な場合もあります)。更新を忘れると自己負担が通常の3割に戻るため、手帳などにカレンダー登録をしておくことを強くお勧めします。
制度を利用する前に知っておくべきこと
自立支援医療は家計の負担を大きく軽減できる制度ですが、いくつかの制約を理解した上で利用することが大切です。
まず、指定医療機関以外では適用されない点です。受給者証に登録した病院・薬局のみが対象となるため、引っ越しや転院の際は必ず変更手続きが必要です。指定外の薬局で薬をもらった場合、その分は通常の3割負担になります。
次に、適用外となる費用がある点です。保険適用外の治療(初診料の一部、食事代、差額ベッド代など)は自立支援医療の対象になりません。また、精神科の診察と同時に行われた内科診察など、精神通院医療と直接関係のない診療は対象外です。
また、毎回の受診・調剤で受給者証を提示する必要があります。証を忘れた場合は一時的に通常の自己負担を支払い、後日精算する形になる場合もあります。
「精神科を受診することが周囲に知られるのでは」と心配される方がいますが、自立支援医療の受給者証は本人が管理するものです。勤務先や学校の証明書類として提出する義務はなく、申請書類は自治体が厳格に管理します。制度の利用が職場などに知られることは、通常の申請手続きの範囲内ではありません。
発達障害・ADHDがある方と自立支援医療制度
「精神通院医療」の対象疾患には、ADHDや自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)などの発達障害が含まれています。これらの診断を受け、精神科・心療内科への継続的な通院が必要と認められれば申請が可能です。
ここで一つ重要なポイントがあります。発達障害の薬物療法(コンサータやストラテラなど)は継続服薬が前提となるケースが多く、月々の薬代が1割負担になる恩恵は相当大きなものになります。
一方で、自立支援医療はあくまでも医療費の支援です。発達特性を持つお子さんや成人の方が日常生活・就労でつまずく課題は、医療だけでは解決しきれません。放課後等デイサービスや就労移行支援・自立訓練といった「障害福祉サービス」と組み合わせることで、より包括的なサポートが実現します。
※制度の活用方法や対象サービスについてもお気軽にご相談ください
自立支援医療制度の対象となる医療の範囲
「どこまで対象になるのか」という疑問はよく寄せられます。精神通院医療を例に、対象になるものとならないものを整理します。
✓ 適用対象になるもの
精神通院医療の場合、登録した指定医療機関での診察・投薬、指定調剤薬局での調剤、精神科訪問看護が対象です。具体的には診察代(再診料・診療報酬)、精神科の薬(向精神薬・抗うつ薬・抗てんかん薬・ADHDの治療薬など)の薬代、デイケア(精神科リハビリテーション)の利用費が該当します。
注目したいのはデイケア(精神科作業療法)も対象に含まれる点です。精神科のデイケアは週複数回の利用が想定されており、これが1割負担になることで生活リハビリへのアクセスが格段に改善されます。
× 適用対象にならないもの
保険外の自由診療、差額ベッド代、入院費、同日に受けた内科・外科などの他科診療(精神科と同時に行った場合でも、内科的治療の部分は対象外)は適用になりません。また、精神通院医療の受給者証で「登録外の医療機関」を受診した費用も対象外です。
よくある勘違いとして、「精神科に入院した費用も1割になる」というものがあります。自立支援医療(精神通院医療)はあくまでも外来(通院)診療が対象であり、入院費は対象になりません。入院費が問題となる場合は、高額療養費制度の活用を検討することになります。
自立支援医療と高額療養費制度の違い
自立支援医療と混同されやすい制度に「高額療養費制度」があります。両者は似ているようで、適用の場面が大きく異なります。
高額療養費制度は、1か月の医療費が一定額(所得によって異なる自己負担限度額)を超えた場合に、超過分が後から払い戻される仕組みです。対象は入院・外来を含むすべての保険医療ですが、申請は事後的な払い戻しが基本です(限度額適用認定証を使えば窓口負担を事前に抑えることも可能)。
一方、自立支援医療は精神疾患や障害の治療に特化し、窓口での自己負担率そのものを1割に変えてしまいます。さらに月額上限も設定されているため、継続的な精神科通院においては自立支援医療の方が家計にとって有利になることがほとんどです。
なお、入院が必要になった場合は自立支援医療は適用されないため、高額療養費制度を使うことになります。また、外来での医療費が非常に高額になる場合は、両制度を理解した上で最適な方法を選択することが重要です。
よくある疑問と誤解
Q 障害者手帳がなければ申請できないのか?
精神通院医療については、精神障害者保健福祉手帳の取得は申請の前提条件ではありません。手帳の申請とは別の制度であるため、手帳を持っていなくても、主治医による診断と申請書類が揃っていれば申請できます。
Q 複数の医療機関に通っている場合は?
精神通院医療の受給者証は、登録できる医療機関が原則として1か所(病院または診療所)です。複数の精神科に通っている場合は、主たる医療機関を1か所選ぶ必要があります。なお、調剤薬局は複数登録できる自治体もあるため、申請先に確認することをお勧めします。
Q 会社の健康保険に加入しているが申請できるか?
申請できます。国民健康保険に限らず、会社の健康保険(協会けんぽ・組合健保・共済組合など)に加入している場合でも自立支援医療を利用できます。ただし、世帯の所得区分の判定には「市区町村民税の課税額」が用いられるため、会社での年収とは必ずしも一致しない点に注意が必要です。
Q 他の医療費助成制度と併用できるか?
自治体によっては、自立支援医療に加えて独自の医療費助成(乳幼児医療費助成・ひとり親家庭等医療費助成など)が上乗せ適用される場合があります。東京都では「東京都医療費助成制度」との組み合わせで実質的な自己負担がさらに軽減されるケースもあります。詳細はお住まいの自治体窓口でご確認ください。
まとめ:医療費の支援だけでなく「次のステップ」へ
自立支援医療制度は、継続的な治療が必要な方の経済的なハードルを大きく下げてくれる制度です。1割負担への軽減と月額上限額の設定により、長期にわたる通院でも安心して治療を続けられる環境が整います。
手続きの煩雑さを感じる方もいるかもしれませんが、「まず主治医に相談して診断書を依頼する」という一歩から始めれば、窓口スタッフが必要な書類を案内してくれます。申請を先延ばしにするより、早めに動く方が経済的なメリットは大きくなります。
一方で、精神科や心療内科への通院と並行して、お子さんの療育や成人の就労支援、フリースクールへの通学といった日常生活上のサポートを組み合わせることで、医療面以外の課題にも取り組むことができます。
株式会社プラスイノベーションは、尼崎を拠点に発達特性を持つ方のライフステージ全体を支える複数のサービスを展開しています。お子さんのIT療育から、成人の就労訓練・就労支援B型まで、医療費支援制度をどの福祉サービスと組み合わせるか迷っているご家族の相談も対応しています。
「自立支援医療を使いながら、Kid'sTECHへの通所も続けています。医療面と療育面の両方でサポートを受けられることで、息子がずいぶん安定してきました。どの制度をどう使えばいいか最初はわからなかったですが、プラスイノベーションのスタッフの方に一緒に整理してもらえて助かりました。」
※制度活用の疑問から療育・就労支援の見学まで、まずはお気軽にご相談ください